FF14バックステージ調査隊⑨ ローカライズチーム<前編>

バックステージ調査隊

こんにちは、宣伝のはまです。
FFXIVの開発/運営スタッフに裏話を聞いていく企画、「FF14バックステージ調査隊」。

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今回は英語・ドイツ語・フランス語のローカライズ担当者にお話を伺いました!
ローカライズといえば、日本語で開発されたゲームを他の言語でお届けするためのお仕事ですが、"テキストの翻訳"以外にも実に様々なお仕事をしています。

個性的な3人との合同インタビューとあって、お届けしたいことが盛りだくさんなので、前編・後編にわけてご紹介します!


******************


はま:

早速ですが、はじめに自己紹介をお願いします。

ポール:

英語リードの一人、ポール (Paul Chandler)と申します。

ゲームやアニメから日本に興味を持つようになりましたが、日本語を勉強して日本へ引っ越すことになったきっかけは、ずばりFFXIです!当時、6年ほどFFXIをプレイしていたなかで、日本人の友達が何人かできました。ゲーム内に定形文辞書が実装されており、そのおかげで何とかコミュニケーションを取れていましたが、それだけでは物足りないと感じるようになったんです。

日本語を学ぶ数少ないチャンスをつかみ、最終的には留学プログラムで来日しました。ゲーム業界で働くことは夢のまた夢でしたが、FFXIでの経験がこのような形で繋がりFFXIVで働くことになるなんて予想外でした。

▼ポールさんのイメージキャラクター
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パメラ:

FFXIVに携わって3年半、ドイツ語リードのパメラ(Pamela Drobig)と申します。

子供の頃、セーラームーンの大ファンで、この情熱が日本のポップカルチャー、さらには日本の歴史・政治・言語への関心に発展していきました。趣味を本格的に活かそうと思って、大学では日本学を勉強しました。昔からクリエイティブな文章を書くことが好きでしたので、翻訳家を目指すことは自然なキャリア選択でした。

なぜスクウェア・エニックスに入ったかというと...... 『ファイナルファンタジー』は、日本を代表するポップカルチャーの一つですから!大学卒業後に日本に移住して、スクウェア・エニックスを目指したことがすべての始まりです。

▼パメラさんのイメージキャラクター
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オディロン:

フランス語リードのオディロン(Odilon Grevet)と申します。

フランスのテレビでは80・90年代に日本のアニメが頻繁に放送されていて、ゲームも普及していました。さらに自分は武道も学んでいたため、小学生のころから日本や日本語に対する興味を持っていました。高校に入って趣味で日本語の勉強を始めてからさらに興味が湧いて、大学では日本語を専攻しました。初めて来日したのは大学2年生の頃でしたが、語学力が足りない自覚があったので、卒業後に1年だけでも日本に住んでみようと決めました。
 ......結果、16年間が経った今も、まだ帰国に至っていません!

最初の数年はフランス語の教師として働いていましたが、パリのゲームショウでゲームクリエイターの通訳を行う機会があったことをきっかけに通訳・翻訳の依頼が増え、キャリアチェンジすることにしました。数年後、スクウェア・エニックスがフランス語の翻訳者を募集していると知り、逃せない機会だと思って応募しました。入社後はずっとFFXIVを担当しています。

▼オディロンさんのイメージキャラクター
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はま:

3人とも興味深い経歴をお持ちですが、日本のゲームやアニメに親しんでいたというルーツは共通していますね。さて、FFXIVにおけるローカライズのワークフローを教えていただけますか? 例えば、1つのパッチアップデートに対して、まずどのような作業をするのでしょうか?

ポール:

まず、最初に依頼されるのがアイテム・アクション・場所などで、新しく命名が必要なものを作業します。これは主に、もう一人の英語リードであるケイトさん(Kathryn Cwynar)が担当していて、世界設定などに合うように他チームのアイディアに対してフィードバックや提案を行うこともあります。

オディロン:

英語以外の言語でも他チームと頻繁に会議をして、キャラクターや場所、アイテムなどのネーミングの依頼を受けていますね。

ポール:

次にカットシーンのアフレコに使用する台本の翻訳を行います。台本を翻訳するときは日本語のシナリオ担当者に質問したり、カットシーンチームと会議をしたりし、さらには各言語で内容が一致しているかどうかを確認しながら進行します。

台本作成が終わり、音声収録の準備ができたら、1~2人のローカライズ担当がアフレコに出席し(最近はビデオ会議システムでリモートです)、物語の筋を説明し、声優さんがよい演技をするためにボイスのディレクターと協力します。


▼ボイス付きのカットシーンは他のパートより先に作業されることが多い
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はま:

ゲームのテキスト全体が仕上がるよりも前にボイス収録があるため、アフレコ用の台本が先に作業されるというわけですね。

ポール:

ボイス収録が終わってくる頃には、カットシーン以外のテキストの翻訳依頼も入ってきますので作業します。

オディロン:

実は翻訳作業を始める前に、設定資料を確認します。どんな内容を訳すのか把握するための「ファミリアライズ」というステップです。

あとは、リードとしてチームメンバーに作業の割り当ても行っています。FFXIVの内容はとても豊富で、同じ人が同じ内容をずっと担当するのをできる限り避けたいと考えながらタスクをアサインしています。スケジュールを固定して翻訳に着手できるようになったら、メインストーリー担当、レイド担当...... など1人1コンテンツ担当してもらいます。

パメラ:

ドイツ語のテキストは英語が出来上がってから、さらに翻訳されているのではないかと思われているかもしれませんが、私たちは日本語からドイツ語へ直で翻訳しています。ですから、日本のチームから最初のテキストを受け取ったときから、私たちの仕事も始まります。

はま:

FFXIVのテキスト量は日本語でプレイしていても相当の量だと感じます。あの量のテキストを、各言語の担当者が並行して翻訳作業をしているのですね......!

オディロン:

FFXIV は翻訳と開発が同時のため、翻訳完成から校正が終わるまでの間、日本語の原稿が更新されることもあり、翻訳を直す期間も必要です。

パメラ:

日本語の変更・調整を反映する作業や、ドイツ語のクロスチェック・校正は最初の翻訳と同じくらい時間がかかることがあります。翻訳しきったと思えたら、QAに引き渡し、QAの方でも残りの間違いや矛盾をふるいにかけてもらいます。


はま:

怒涛の作業ですね...... しかも、ゲーム以外のテキスト翻訳も担当していますよね?

ポール:

そうですね、世界設定本、グッズのネーミング、サウンドトラックのライナーノーツなど、パッチアップデート以外の翻訳作業もあって、手が空いている時期はあまりないですね。

パメラ:

各種Webコンテンツの翻訳を担当したり、フォーラムに報告していただいたバグの修正に対応したり、必要に応じて世界設定の面でもサポートしています。


▼世界設定本も、Lodestoneに掲載される大事なお知らせも、ローカライズチームが翻訳している
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はま:

いろいろな文章を翻訳しているなかで、翻訳の際に意識していることはありますか?例えば、キャラクターのセリフの翻訳と、アイテムの説明テキストの翻訳ではアプローチも違うのでしょうか。

ポール:

FFXIVのテキストは色々な形で表現されるので、ケースごとに検討すべきことは異なります。例えば、ボイスカットシーンの翻訳ではセリフのテキストだけではなく、声優さんのことを考慮します。

声優さんの演技や声色は、文字情報と同じか、それ以上に多くのことを表現することができます。セリフが翻訳によって少し違う形になったとしても、それが声優さんの演技とあわさることで書き手の本来の意図を保つことができるんです。一方で、セリフの尺をモーションに合わせる必要があって気を遣うこともあります。

パメラ:

クエストや特にメインシナリオでは、対話の内容やムードを忠実に伝えるようにしていますが、アイテムの説明ではより自由に翻訳します。また、キャラクターの会話はすべてクリエイティブな書き方ですが、アクションの説明は特定の形式に従う必要があり、明確で理解しやすいものである必要があります。

アプローチはどちらの方法でも同じです。私たちの目標は、プレイヤーがFFXIVの世界に没頭できるようにして、ゲームのあらゆる要素に触れてもらうことです。例えば、メインシナリオではキャラクターに愛着を持ってもらい、トリプルトライアドでは冒険者にリラックスした休息を提供する必要があります。そのため、私たちは翻訳面でもコンテンツごとにスタイルを適応させ、様々な体験を提供できるようにアプローチしています。

▼キャラクターのセリフとアクションの説明では、書き口が違う
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オディロン:

吹替え用のセリフと、ゲームのチュートリアルやジョブアクションの説明とは、もちろん訳し方が違います。独自のスタイルと細かいルールを持つコンテンツもあれば、クリエイティブなライティングができるコンテンツもあります。新生9周年を迎えるFFXIVでは、たくさんのキャラクターがユニークなしゃべり方をしていますので、表現を統一するため過去のセリフを常に確認しています。

約10年に渡る長い間で、フランス語版に関わったスタッフが大勢いるため、ゲームの統一感を守るのは大事で、それを意識しながら翻訳しています。

はま:

ひとりで翻訳していているわけではなくチーム作業になるので、統一感を出すためのチェックも大切なのですね。

......と、ローカライズのお仕事内容を紹介してきましたが前編はここまで。
後編では、お気に入りのシーンやお仕事のやりがいについて伺います!

宣伝 はま


FF14バックステージ調査隊バックナンバー

第1回:世界設定/メインシナリオライター:織田万里さん

第2回:リードレベルデザイナー:高橋新さん

第3回:WEBディレクター:高地浩之さん

第4回:UIアーティスト:関洋一さん

・第5回:コンセプトアーティスト:長嶺裕幸さん

・第6回:コミュニティチーム:加藤岳志さん

・第7回:リードテクニカルアーティスト:岡久達哉さん

・第8回:VFXアーティスト:石井隆康さん

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